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Radical   Discovery 




もうそこにいないわたし




 GONE FROM HIS EYES  
 ブリギッタ : き、緊急連絡です!
         キャンプシップ周囲にダーカーの反応!
         異常重力源に引き寄せられています!
       : テレプールの転送座標にノイズを確認!
         不測の事態に注意して
         任務遂行をお願いします!

 A.P.238/6/13/10:00
 メルフォンシーナ : ……あ、どうも。
            ○○様
            お久しぶりです。
          : あれ……ここは……
          : ……私は依頼で
            来たんではありません。
            気付いたときにはここにいました。
          : ……数々の報告にあるように
            私自身もまた、連れてこられたの
            かもしれません。
          : ……とはいえ、私自身が
            この場を探していたので
            ちょうどいいです。
          : 十中八九、ダーカーか
            それに準ずる者のしわざである
            この現象、この場所。
          : とはいえ、何の目的で模倣体を
            生成しているのか……
            そんなことには興味がありません。
          : 私にとっての興味……
            それはここで、かのダークファルスの
            目撃証言があったこと。
          : 私は、その真偽を確かめたい……
            それだけです。
          : ……一緒に来ていただけるのなら
            うれしいですが、気遣いは無用です。
          : 私には、気遣われるだけの
            価値はありませんので。

 A.P.238/6/13/10:30
 メルフォンシーナ : ……本当、ダーカーの気配が
            異常なまでに濃い場所ですね。
          : もし、ゲッテムハルト様が
            いらっしゃったら、喜び勇んで
            大暴れしそうなほどです……
          : ……ふふ、懐かしいですね。
            まだ、それほど時間を経ていないのに
            とても懐かしい感じがします。
          : ……私がお会いしたばかりの
            ゲッテムハルト様は、猛々しさこそあれ
            そこまで暴力的ではありませんでした。
          : 幼かった私の相手もしてくれましたし
            他の方から……それこそ、ゼノ様からも
            嫌われていたりはしなかったはず……
 メルフォンシーナ : だけど、それを壊したのは、私……
 メルフォンシーナ : っ!?
            だ、誰ですか、貴方は!
          : その姿……私、自身?!
 メルフォンシーナ : 10年前……ダーカー襲撃……
            ダークファルス【若人】の顕現……
          : 私を守るために……
            私が出てきたばかりに……
            出しゃばったばかりに……
 メルフォンシーナ : っ!
            そんなことない!
            そんなことは……っ!
          : はっ……はっ……
            先に……先に、進みましょう。

 A.P.238/6/13/11:00
 メルフォンシーナ : ……先程の、私の紛い物の
            言っていたこと、聞いてましたか?
          : 忘れてください。
            すべては、終わったことです。
          : 10年前に起こったことも
            ゲッテムハルト様が
            変わってしまわれたことも……全部。
 メルフォンシーナ : 私はただ、姉さんになりたかった。
            姉さんのように、なりたかった。
 メルフォンシーナ : っ! また!
 メルフォンシーナ : 私を守って、死んだ……
            私を守ろうとして、死んだ……
            みんな、私に関わる人は……
 メルフォンシーナ : うるさい、うるさいっ!
            そう! 私に関わったら皆、死ぬ。
            だから誰も近づけなかったのにッ!
 メルフォンシーナ : でも、私は嬉しかった。
            皆死んで、ゲッテムハルト様のそばに
            一人でいられるようになったから……
 メルフォンシーナ : っ!
            そ、そんなことは……!
 メルフォンシーナ : 姉さんと代わりたかった……
            姉さんのように、代わりたかった……
          : だから、私は、あの時に……
            危険と言われたあの時に……
 メルフォンシーナ : 黙ってッ!
          : はぁ……はぁっ……
          : そんな……そんなつもりはない。
            私はゲッテムハルト様にも、姉さんにも
            そんなつもりはなかった……!
          : 自然と笑ってる二人を見てるのが
            好きだっただけ……
          : それだけのはず……だったのに。

 A.P.238/6/13/11:30
 メルフォンシーナ : もっと私を見て欲しかった。
            私だってできると、見て欲しかった。
            姉さんに並ぶと、思って欲しかった。
 メルフォンシーナ : そう……私は姉さんになりたかった。
            ゲッテムハルト様が笑い、共に歩む
            姉さんと、代わりたかった。
          : それはもう叶わない……
            10年前のあの日、姉さんは
 メルフォンシーナ : ゲッテムハルト様の、目の前で……
 メルフォンシーナ : 誰もが慰めの言葉をくれました。
            仕方がないと、言ってくれました。
 メルフォンシーナ : でも、私は知っている。
            私とゲッテムハルト様は知っている。
 メルフォンシーナ : それは決して、仕方がない
 メルフォンシーナ : なんてことはない、ということを。
 メルフォンシーナ : ゲッテムハルト様は、壊れてしまった。
 メルフォンシーナ : ゲッテムハルト様を、壊してしまった。
          : だから私は、役には立てない。
            あの人の隣に、立ってはならない。
          : ……すべては罰なんです。
            欲張った私に対する、罰。
          : ゲッテムハルト様は復讐にかられ
            二度と私に笑ってくれなくなって……
          : やがて私を……私ではなく……
            シーナと、呼ぶようになりました。

 A.P.238/6/13/12:00
 メルフォンシーナ : あいつは……っ!
 【巨躯】 : 余興程度にはなるかと思ったが……
        やはり、この仕組みは
        気に喰わん……滾るものがない。
      : 義理は立てるが、義務はない。
        もはや、これまでだな。
      : ……む、貴様は。
        このような場所で遭遇とは
        くふふっ、随分と縁があるようだ。
 メルフォンシーナ : 貴方が……
            ダークファルス【巨躯】。
            ゲッテムハルト様を、奪ったもの……
          : ……返せ。
 【巨躯】 : 何?
 メルフォンシーナ : ゲッテムハルト様を……
            返せぇッ!!

 A.P.238/6/13/12:30
 【巨躯】 : やめだ。
        やはりこの場での戦闘は興が乗らん。
      : 我と貴様の闘争には、さらに
        相応しい場があるはずだ。
      : このような無粋な場での
        決着は、我が意に沿わん。
 メルフォンシーナ : 返せ……ゲッテムハルト様を……
            返して……あの人を……ッ!
 【巨躯】 : ふん……この身の者と共に我を
        呼び寄せたと思えば、今度は返せか。
        人はつくづく身勝手なものだな。
      : だが、その身勝手さ故に
        我らが生まれたと考えれば……
        感謝すべきなのかもしれんがな。
      : そこの小さき存在よ……
        貴様の名は、何という。
 メルフォンシーナ : ……私は、私の名は…………ッ。
 【巨躯】 : シーナ……
        この存在取り戻したくば
        その細腕で我が身砕いてみせよ。
      : この身の者が、かつて
        貴様に望んだようにな。
 メルフォンシーナ : あ……
            ゲッテムハルト……さま……

 ブリギッタ : ……さん!
         ○○さん!
         聞こえていますか!
       : よかった……無事のようですね。
         そちらの座標を確認しました。
         回収するので、テレパイプで帰還を。

 A.P.238/6/13/12:40
 メルフォンシーナ : ……あの、すみませんでした。
            今回もまたご迷惑をおかけして。
          : ……お礼、というわけではないのですが
            よろしければ、これをお持ち下さい。
          : 私ならば大丈夫です。
            当面の目標は定まりましたから
            身を捨てる気も、ありません。
          : ただ、できるなら……
            今回のことは、他言無用で願います。
          : あと、迷惑ついでに一つ
            覚えておいてもらっていいですか。
          : ……メルランディア。
            それが、私の本当の名前です。
          : 今はまだ使うわけにはいきません。
            けど、誰かに覚えててほしくて……
          : ……それでは、失礼します。






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