A.P.239/5/10/10:00
アウロラ : ぐるっと回ってきてわかったけど
この惑星にダークファルス【若人】の
力が封印されているみたいね。
ユクリータ : ……何であんたに
そんなことがわかるのよ。
アウロラ : これでもダークファルスだったのよ?
元、だけどね。
ユクちゃんだってわかるでしょ?
ユクリータ : あんたと一緒にしないで。
アウロラ : 何よう、つれない返事ね。
いいわよ、勝手に話しちゃうから。
: あの採掘機械で【若人】の
力を削いでいるのでしょう?
この場に、封印しつづけるために。
: ……でもアタシは、あんな機械も
こんな惑星も知らない。
: ……ほんとうに、ここはアタシの
知らない時間、知らない場所なのね。
: それにここからは……
ううん、この世界には
フォトナーの存在を、感じない。
: 本当に、滅んじゃったのね。
……いなくなっちゃったのね。
アフィン : おい、お前……
アウロラ : でも、あの採掘機械
あれできちんと作動してるのかしら?
アフィン : ……そりゃ作動してるだろ。
あんだけもくもく煙出てるんだし。
アウロラ : 力を削いでいるなら……
……何に反応しているの?
この先に何らかの触媒があるとでも?
アフィン : あっ、おい!
どこ行くつもりだよ!
ユクリータ : …………
アフィン : ユク姉、どうする?
ユクリータ : ……放っておけないわよ。
あいつとあたしは
リンクしちゃってるんだから。
アフィン : おい、待てって!
まったく、どんどん進むから
壊世区域にまで入っちまったじゃんか。
アウロラ : ……壊世区域。
この不安定な場所が、そうなのね。
: きっとここは【深遠なる闇】の餌場。
【深遠なる闇】の餌が育つ場所。
でも……
: ……ねえ。
【深遠なる闇】は、ここじゃない場で
復活してしまったのよね?
: なら……この壊世区域はもう用なし。
完全に、宙ぶらりんの状態。
……ううん、そうじゃないかな。
: ここだけ、世界になじめてない。
ここだけ、違う時間が流れてる。
: ……ははっ。
まるで今のアタシみたいね。
: ユクちゃん……
ユクリータ : この先から何か感じてるんでしょう。
調査するなら、さっさと行くわよ。
A.P.239/5/10/10:30
アフィン : ……噂以上だな、壊世区域って。
こんなとんでもないのばっかり
住み着いてるのかよ。
ユクリータ : 壊世区域が惑星に馴染みきったら
こんなものじゃすまないわよ。
……そうでしょう?
アウロラ : そんなのわからないわよ。
アタシは……アタシは
ダークファルスじゃないんだから。
: ……ねえ、ユクちゃん。
アナタはどうして
【若人】になったの?
ユクリータ : ……あたしが聞きたいぐらいよ。
アフィン : ユク姉は巻き込まれただけだ。
自分からダークファルスになった
お前と一緒にするな。
アウロラ : 自分から……か。
そうね、アタシは自ら望んで
ダークファルスになったのよね。
: ……少し、昔話をしましょうか。
: 世界で一番美しかったオンナの話。
美しさだけで頂点へ上り詰めた
……アタシの話。
: アタシは、アタシの可愛さ、美しさ
器量、経験、全てに自身があった。
誰にも負ける気はなかった。
: 周りがどんどん落ちていくなか
アタシは残った。てっぺんに。
: でも下からはどんどん手が伸びてくる。
アタシを引きずり下ろそうとする
欲にまみれた数多の手が。
: 迫ってくるのは、手だけじゃない。
アタシでも逆らいがたい、世の理。
それが「飽き」と「老い」。
: 栄枯盛衰。世は常にそういう流れよ。
そんなことわかっている、けどそれでも
アタシは舞台から落ちたくなかった。
: クローニングや肉体の差し替えで
若さを保てばいい?
: 違う、それはアタシじゃない!
アタシはアタシのままで一番になった!
: だからアタシは
アタシのままでないと
意味がないの……!
: 一大プロジェクトだった
シオンちゃんのコピー生成と失敗。
挙げ句の果ての【深遠なる闇】発生。
: 激動の時代。
でも、そんなのアタシにとっては
どうでもよかった。
: アタシが戦っていた世界は別の世界。
嘘と疑念と妬心の渦巻く
美しくも恐ろしい世界。
: 誰よりも美しいまま
誰よりも魅力に満ち
誰よりも若くありたいと……!
: アタシの願いはそれだけだった。
……それだけのはずだった、のに。
>その願望を取り込まれた?
アウロラ : ……はっきりとは
覚えてないけどね。
>その結果が、今の時代だ
アウロラ : ……わかってるわよ。
そんなの言われなくても
わかってる。
アウロラ : でも、アタシだけのせいじゃないわ。
アタシ以外にもダークファルスは生まれ
そいつらも暴れ回って……!
ユクリータ : ……でも、あたしたち【若人】が
行ってきたことは、消えないわ。
: 数多の星を侵食してきたこと……
【深遠なる闇】を復活させたこと……
: ……責任が、あるのよ。
あんたにも……あたしにもね。
アフィン : 姉ちゃん……
アウロラ : ……気になることがあるの
奥に進みましょう。
A.P.239/5/10/11:00
アフィン : 迷い込んじゃったのか?
よーしよし。もう大丈夫だからなー。
アウロラ : ……ふふん。
ずいぶん嫌われちゃってるのね。
ユクリータ : 嫌われて当然でしょ。
【若人】だったころに、この惑星を
何度も襲撃してきたからね。
: アークスや、リリーパ族を
どれだけ苦しめてきたか
彼らの反応を見れば、わかるわ。
アウロラ : それだけじゃない。
この惑星に起こっている異常だって
アナタやアタシのせいって……!
ユクリータ : 思われてるでしょう。
そのための監視も来たし。
アウロラ : ねえ、ユクちゃん。
アナタは納得しているの?
: ただ、巻き込まれただけなのに
こうして、他人に嫌われたり
自分のせいにされたり……
ユクリータ : ……そうね。
理不尽、と思うことはあるわ。
: でも、誰のせいにすることもできない。
望む望まないに関わらず、あたしが
ダークファルスだったのは事実だから。
: ……ねえ、アウロラ。
あんた、何におびえてるの?
アウロラ : っ……!
おびえて、なんか!
ユクリータ : あたしとあんたはリンクしてる。
感情なんかも少し伝わってくるのよ。
: あんた、そんなに
誰かに嫌われるのが怖いの?
アウロラ : ……当たり前でしょう。
嫌われたら、終わりなのよ。
落ちていくだけなのよ!
: アタシは、アタシを好きで
いてくれる人たちのおかげで
そこにいられたんだから……!
: 誰からも嫌われたくなかった。
誰にでも愛してもらいたかった。
: そうよ! 【深遠なる闇】だって
アタシは何も知らない、知らなかった!
: なのに、みんなは
アタシたちのせいだって!
アタシたちを……アタシを、嫌う……!
: だからあの声に応えた……
こんなことになるなんて
思ってなかった!
: みんなは!
アタシ以外のみんなは
どこに行っちゃったの!
: みんな、神とまで呼ばれた存在でしょ!
そんな簡単にやられたりしないでしょ!
七の男神! 十三の女神! どこ!
: そこまで上り詰めて……
……そこまで上り詰めるために
他の全てを捨て去ったのに……!
: マイも、ラビュも、フローラも
ロートも! ナナキも! タムも!
……本当に、いなくなっちゃったの?
: アタシは……こんなこと
するつもりじゃなかったのに。
どうして……こんなことに……!
: ねえ、ユクちゃん。
アタシ、悪くないわよね?
悪くなんて、ないわよね?
: お願い、答えてよ、ユクちゃん。
ユクちゃんも、アタシも……
アタシたちは、悪くないはずよね……?
ユクリータ : ……それは、あんたが
自分で決めることよ。
A.P.239/5/10/11:30
アフィン : あれは……アンガ・ファンダージ!
アウロラ : ……あれが【深遠なる闇】の触媒。
いえ……餌、なのね。
アフィン : ってか、あいつ何やってんだ?
地面に何か送ってるのか?
ユクリータ : ……吸収されているって
表現の方が正しそうね。
そうでしょう、アウロラ?
アウロラ : いったぁっ!
ちょっと何すんのよユクちゃん!
ユクリータ : あんた、あたしよりも年下のくせに
いつまでいじけてるつもりよ。
アウロラ : い、いじけてなんか……!
ユクリータ : 二度目。
感情筒抜けって話も
もう一度しなきゃダメ?
: あんた、自分が今ここに戻ってきた
その意味を考えなさい。
: フォトンが形をなすときは
良きにしろ悪しきにしろ、意味がある。
: じゃあ、【深遠なる闇】や
ダークファルスから切り離されて
戻ってきたあんたの意味は何?
: フォトンが今この時、この場所に
あんたを紡ぎ上げた意味って、何?
あんたがここにいる意味は、何よ?
アウロラ : 今ここにいる、意味……
今ここにいる、意味……
アタシが、今ここに在る意味……
ユクリータ : 起きてしまったことは仕方がない。
それを悔やみ続けても
なんにも変わらない。
: だから、もう後悔しないように
これからを頑張るしかないの。
……あんたも、あたしも。
アウロラ : ……ユクちゃんはどうして
そんなに強くいられるの?
ユクリータ : あたしだって、一人きりだったら
きっと自分の心に潰されてたわよ。
……でも。
: あたしを信じてくれるやつがいる。
だから、それで十分。
アウロラ : ユクちゃんは、アタシを信じられる?
アタシを信じてくれるの?
ユクリータ : 三度目。
: ここまであたしたちを連れてきたのは
あんたでしょうが!
ごちゃごちゃ悩むな、アウロラ!
アウロラ : ……まったく、いつもみんなを
激励する側だったアタシが……
こんな小娘に励まされるなんて。
: 【深遠なる闇】復活の影響を受けて
ここに封印されてる【若人】の力が
復活しようとしている。
: わかりやすく言うと、餌を集めてる。
あのバケモノが、そうよ。
アフィン : なら、みすみす食べさせるわけには
いかないってことだな!
アウロラ : ユクちゃん、食い止めましょう。
【若人】も、ここで……
アタシも、力を貸すから。
ユクリータ : 力を貸す、って……?
アウロラ : ユクちゃん、アタシの名を呼んで!
誰よりも煌々と輝き、舞い踊り
全てを魅了した、アタシの名を。
: アタシを象徴する、名を。
アタシから感じ取り
聞こえたその名を、呼んで。
ユクリータ : ……魅せろ煌舞、アウロラ。
ユクリータ : この武器は……アウロラ、あんた?
アウロラ : 今のアタシは、フォトンが具現化したもの。
人の形のみならず武器にだってなれる。
ユクちゃん専用の、武器にね。
ユクリータ : ……あたし、武器とかそういうの
結構乱暴に扱うわよ?
アウロラ : ……構わないわ。
痛い方が、救われるから。
ユクリータ : あいつが【若人】に喰われ尽くす前に
倒して切り離す!
いいわね、二人とも!
アフィン : おう!
A.P.239/5/10/12:00
アフィン : ふいーっ……なんとかなった。
これで大丈夫なんだろ?
ユクリータ : …………
アフィン : ユク姉?
アウロラ : ……!
そこを離れて!
アフィン : うぇっ!? 気持ち悪っ!
なんだよありゃあ!
アウロラ : 餌を前に我慢できなかったってトコロ?
倒して砕いたカケラも残さず丸呑みとか
食い意地張った酷いヤツね、まったく!
アフィン : おおもとはあんたなんだけどね。
アウロラ : ユクちゃんうるさい!
シャオ : ○○。
無事かい?
: リリーパのダーカー反応が増大中だ。
やっぱり、アウロラの出現は
何かの前兆だったみたいだね。
ユクリータ : これは……惑星自体に巣くう形で
無理矢理復活するつもりね、【若人】!
アウロラ : う、ううーん、さすがにこの規模は
アタシたちだけじゃ手に余るわよ
ユクちゃん。
ユクリータ : ……アークスの代表者!
今通信してるあんた! 聞いてる!
シャオ : もちろん、聞こえてるよ。
はじめましてだね、ユクリータ。
ユクリータ : ……ダークファルス【若人】が
復活しようとしているわ。
: これを止めるには
多くのアークスの協力が必要不可欠。
……力を貸して、くれないかしら。
シャオ : そんなの頼まれるまでもないさ。
すぐにアークス全員へ緊急連絡を渡す。
それで問題ないかな?
ユクリータ : ……あたしの言うことを
そんな簡単に信用していいの?
シャオ : 信用に足る行動を
してくれたからこそだよ。
ね、○○?
: それじゃ、四人とも。
そこにいると危ないから
いったんこっちに戻ってくるように。
ユクリータ : 戻るって……
あたしも、アークスシップに?
アウロラ : なぁにユクちゃん、怖いのぉ?
みんなに怒られるのとか嫌われるの
怖がったりしちゃってるのぉ?
アフィン : ……ユク姉、戻ろう?
ユクリータ : ……まったくもう。
仕方がないわね。
|