A.P.238/5/1
シオン : ……よく、来てくれた。
今、この時軸上で起こっている
改変事象について話が……
ルーサー : ……僕の分析によると
このあたりかな。
: 聞こえているかな、シオン。
ようやく僕もここまで理解できたよ。
: いろいろと動いてるみたいだね。
デューマンなんて新種族
僕の予定にはなかったよ。
: 歴史への介入、なのかな?
……面白いことをするね。
: まあ、だからといって僕は
怒ったりなんかしないよ?
君に嫌われたくないからね。
: ……ははっ、流石にまだ
君の姿を見るには至らないか。
: 僕は君の理解者で
ありたいんだけど……
君はまだ、そうでもないようだ。
: あまり君の機嫌を
損ねたくもないからね。
今日はこれで失礼するよ。
: どうだろうか?
彼女は聞いていてくれたかな?
: 君にも感謝しなければならないね。
君のおかげで、僕は彼女を
ここまで理解できたんだから。
: なぜ彼女がそんなことをするのか
それまではわからないが……
一つになったときの楽しみにしよう。
: 僕の名はルーサー。
君たちに研究室と呼ばれている。
……虚空機関の総長さ。
: それでは、また会おう。
シオン : 彼にわたしの姿は見えていない。
私の声すら、届いてはいない。
しかし、彼はわたしを認識している。
: あれの存在こそが
わたしが貴方に全てを託す理由だ。
: 彼との因縁に
けりをつけなければならない。
: ……しかし
彼が歪んでしまったのも
また、わたしが存在したからだ。
: 原初の好奇を、わたしは後悔する。
そして、貴方に依存しなければ
ならないことも……
クーナ : あれが、ルーサー
……フォトナーの、長。
カスラ : 正しくフォトナーと呼べるのは
もう彼だけでしょうから
まあ、間違ってはいませんね。
: 他のは全て、フォトナーになりたいと
願う研究者が、背伸びして
そう言っているだけにすぎない……
: 巨躯の封印解除に、造龍の離反。
目論見のズレが目立って苛立ったか
とうとう姿を見せてきましたね。
: しかし、最初の接触相手が
あの人とは……
どういう因果なのでしょうね。
クーナ : ……そんなのどうでもいい。
わたしは、わたしとハドレッドの
運命を狂わせた相手を討つだけ。
カスラ : クーナさん。
○○さんが
鍵です。わかっていますね。
クーナ : わたしはわたしのやり方で、戦います。
貴方と馴れ合うつもりはありませんよ。
六芒均衡……いえ、三英雄カスラ。
: それより、貴方の方こそ
わかっているんでしょうね。
カスラ : ええ、わかっていますよクーナさん。
全てが終わったら、この首、この命
好きなように扱ってください。
: そういう契約ですからね。
貴方にもそれだけのリスクを
背負わせていますし、約束は守ります。
クーナ : ……気に入らない。
全てを受け入れているようなその顔。
貴方の目的は、何なんですか。
カスラ : 今のところは、貴方と同じですよ。
クーナ : ……ふん、
カスラ : 従順なのはここまでです。
ルーサー、貴様だけは……
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A.P.238/5/11
シオン : ……ついに、来たようだ。
マトイ : ○○……
ごめん、驚かせちゃって。
: 最近のあなた
深刻そうな顔をしてたから
気になって……
: ……そちらの人は、誰?
>見えるの?
: うん、
えっと……
見えちゃいけない人、だった?
>……誰もいないよ
: そういわれても……
白衣を着たひと、いるよ?
シオン : 彼女が私を認識できることは
問題ない。
彼女は、ルーサーとは違う。
: 貴方と同じように
彼女もわたしとの縁を持つ存在。
わたしが見えるのも当然だ。
マトイ : ……なんだろう
貴方のこと、知らないはずなのに
すごく懐かしい感じが、する。
シオン : 今はまだ、考えなくていい。
時期が来れば、自ずと導かれる。
マトイ : ……そう、なの?
でも、きっと貴方がそういうのなら
そうなんだよね、うん。
シオン : また、私を信じてくれるか?
……まだ、わたしを信じてくれるか?
マトイ : ……うん。信じるよ。
○○が
信じているひとだもんね。
シオン : 貴方に、感謝を
あの時、あの場所で彼女を
救い出したからこそ、今がある。
: そしてその行為は、時を経て
未来をつなぐ鍵となる。
あとは、かの創世器のみ……
: だが、それよりも
そんなことよりも……
: 感謝する。
彼女を、助けてくれたことを。
マトイ : そこにいるような、いないような
……とっても、不思議なひと。
: でも、あったかい感じだった。
あなたに初めて会ったときみたい。
: きっと貴方は今、大変なことをしてて
これからも大変なんだと思う。
: でも、忘れないでね。
わたしは、貴方を信じているし
どんなことがあっても一緒にいるから。
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A.P.238/5/27
マトイ : あ、○○。
あなたも来たんだね。
うん、わたしもちょっと会いたくて。
: ……でも、ちょっと
シオンさんの様子がヘンなの。
辛そうというか……苦しそう。
シオン : ……わたしは、時に思うことがある。
何もせずに、流れのままに任せた方が
あるいは良かったのではないか、と。
: 貴方や彼女に対し、辛苦をかけ続ける
この行為の意味は何なのか。
: 原初の邂逅まで遡り、それ自体を
なかったことにするのが
最良の解決なのではないか。
: ……わたしたちは観ている。
その解決は間違いであることを。
しかしそれでも、思わずにはいられない。
: もし、全てをなかったことにしていれば
あるいは皆、何事に怯えることもなく
自然のままに生きられたのでは、と……
マトイ : ……それは、違うよ。
: だって、あなたが導いてくれなければ
わたしは助からなかったんでしょう?
: ○○と
出会うことができなかったんでしょ?
: わたしは感謝しているよ。
わたしとこの人を巡り合わせて
くれたのは、あなたなんだから。
: そこまでに、辛いことや苦しいことが
いっぱいあったのかもしれないけど……
それでも、感謝してる。
: だから、苦しまないで……
あなたの選んだ道はきっと
みんなの幸せにつながってるから。
シオン : ……ありがとう。
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A.P.238/6/12
ルーサー : いい加減やめないか、シオン。
無駄な行為は君に似合わないよ。
: オラクルも、アークスもすべて
僕の手の内にあるんだし
それに君自身だって……
シオン : この世に無駄なことなどないと
わたしに説いたのはひとだ。
そこからわたしたちは、始まった。
ルーサー : まあ、いいけどね。
イレギュラーはあればあるほど
おもしろい。
: 過程を楽しむ。
それこそ、長い時を生きるものの
楽しみであり、特権だからさ。
: いろいろ動いているみたいだね。
方々から報告は聞いているよ。
: 邪魔はしないさ、好きにするといい。
そのほうが退屈しないし、面白い。
: 長い永い人生には、刺激が必要だ。
ねえ、きみたちもそう思うだろう?
シオン : ルーサーはすでに人ではない。
しかし、人であることを
忘れてもいない。
: ……物事を、楽しみすぎる。
元々は人であったが故に
退屈を何よりも恐れている。
: それが強さでもあり、弱さでもある。
つけ込むべきは、そこだろう。
: わたしならば、そう動くはず。
わたしたちも、そう考えている。
だから、間違いはないはずだ。
: あなたは、信じて進むといい。
目指した先に道は生まれる。
皆が望んだ、新しい道が。
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A.P.238/6/29
シオン : ……ひとつ、昔話を聞いて欲しい。
おろかな『もの』と
おろかな『ひと』の話だ。
: 全てを識っている存在だった『もの』と
全てに興味を持つ存在だった『ひと』が
出会ってしまったことが、始まりだ。
: 『もの』は、『ひと』の望むがままに
知恵と知識を与えた。
: それは『もの』にとっては
些末な知識であったが
『ひと』はそれを礎に進化を遂げた。
: 『ひと』は『もの』の
好奇心を刺激した。
: 全てを識ってなお、理解できない
『ひと』の心に、『もの』は惹かれた。
: そうして、『もの』と『ひと』は
隣人となった。
: 相互に望む物を与え続ける存在として
長い永い繁栄を続けていた。
: 『ひと』は貪欲でありながら怠惰だ。
楽をするために、全ての力を注ぐ。
ありとあらゆる知恵を絞りつくす。
: その思考の動きはユニークであり
観るには楽しくもある、が……
甘く観すぎた。
: その怠惰が作りあげた物が
やがて崩壊をまねくと識りながら
『もの』は、『ひと』に伝えなかった。
: その結果が、『ひと』をどう変えるか。
それを観たいと思ったがために……
: おろかなのは『ひと』ではない。
識りながらそれを伝えなかった
わたしこそが、おろかなのだ。
: ……心配はいらない。
出会ったことは、嬉しいこと。
それは、かけがえのないことだ。
: でなければ、わたしは今こうして
貴方たちと話すこともできなかった。
今のこの場は存在し得なかった。
: かつての人たちはこう言っていた。
「未来はわからないから楽しい」と。
わたしも今ならばそう思う。
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A.P.238/7/7
シオン : ……○○。
聞こえているか、わたしだ。
: ついにこの時が来た。
過去を清算するべき時が。
: 彼女……マトイのところへ。
: ……待っている。
わたしとわたしたちは
貴方たちによる清算を。
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