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花の色はうつりにけりな
「はなのいろは うつりにけりな いたづらに
わがみよにふる ながめせしまに」
── 『古今和歌集』 113
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紫 「そこの通りすがりの船頭さん。ちょいとお時間良いかしら?」
小町 「おや、珍しい顔が歩いてる」
紫 「船頭が山に居るのも珍しくてよ。油の売れ行きは好調かしら?」
小町 「私が売るのは油じゃなくて恩なんだよねぇ。
それに、通りすがっているのはお前さんだろうに」
紫 「そうそう、って聞きたいことはそんな事じゃなくて。
今、幻想郷は花でいっぱいじゃないの。これって何でかしら?」
小町 「花でいっぱい? さて?」
紫 「六十年に一度、どうして花が咲くのかしら?」
小町 「あー?」
紫 「あの方は、この事を知っているのかしら?」
小町 「……お前さん、何が言いたいんだ?」
紫 「ああ、どうしましょう。いまに忘れてしまいそうだわ。
貴方が無縁塚に居るのも、昔の事を忘れてしまったからでしょう。
私が覚えているうちに、賽は投げておかないといけないの。
ご覧なさい。あの桜を──、紫色に変わり行く罪の桜を」
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花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
(咲き誇っていた花も、色褪せてしまうのだな。
ただ虚しく生きて物思いに耽り、長雨が降り続いている間に)
── 小野小町
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