Radical   Discovery 



  
春の湊


  「くれてゆく はるのみなとは しらねども
          かすみにおつる うじのしばふね」

                   ── 『新古今和歌集』 169



  「あー寒いったら寒い」
 霊夢 「あれ、今年はやけに活動的なのね」
  「私が年中寝てると思ったら大違いよ。
    忘年会も新年会も誘いが無いなんて、一体どうなっているのかしら」
 霊夢 「あんたなんか呼ばないわよ。呼んでも来ないし。
     おっと、無駄話してる場合じゃなかった。どいてどいて」
  「宝船なら、あっちの方向に飛んでいったわよ」
 霊夢 「なるほど、そっちね……って、何で知ってるの?」
  「さすがは、私ですよ」
 霊夢 「ていうか最近、あんたの来るタイミングが完璧なのよね。
     一体何処から見張ってるんだか……」
  「霊夢の行先なんて、春を探すよりも簡単な事だわ。
    さあ、乗りかかった船には全力で乗り込みなさい。
    間違っても、舟には乗せられないようにね」
 霊夢 「もう、調子狂うなぁ。……って急がないと!」
  「お土産よろしくね〜」

  「──陰陽玉の通信機には、まだ気付いてないか。
    去年の暮れから盗聴してるなんて知ったら、一体どんな顔するかしら。
    ……さてさて、私も探しますか。霞に紛れた黒船を」



暮れてゆく 春の湊は しらねども 霞におつる 宇治の柴舟
  (過ぎ去っていく春の行き着く先は知れないが、
     宇治川の霞に消えて行く柴舟とともに、春の終わりを感じる)

                             ── 寂蓮