Radical   Discovery 



  
虧たる事も無しと思へば


  「このよをば わがよとぞおもふ もちづきの
          かけたることも なしとおもへば」

                    ── 『小右記』



 霊夢 「ちょ、ちょっと……」
  「今夜は永くなるわよ。でも、急ぎなの」
 霊夢 「待ってよ。異変なんて起きてないじゃない。
      あったら私がとっくに解決してるわ」
  「毎晩宴会してたのにねぇ」
 霊夢 「う……、あれは何か起きたら対処しようと思ってたの!
      それに、毎晩じゃなくて三日置きだし……」
  「私は夜を止めた。もう貴方も無関係で居られないわ。
    貴方も巫女なら、なりふり構わず踊りなさい。
    引きこもりの困ったちゃんが改心するかもしれないから」
 霊夢 「またわけのわからないこと言って……って、
      夜を止めたって、それが異変なんじゃないの?」
  「面白そうでしょう。夜が明けない異変」
 霊夢 「犯人はあんたね」
  「退治する?」
 霊夢 「でも……何か違う」
  「そういうこと。貴方は自分の勘を信じていればいいの。
    私たちは既に一蓮托生。貴方はもう共犯よ」
 霊夢 「何それ、嫌だなぁ」
  「幻想郷の夜は、満月は誰のものでもない。
    偽りの夜を抜けて、本物の夜を取り戻すのよ」



此の世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 虧たる事も 無しと思へば
  (この世は私のものだと思う。
     あの満月のように、欠けることなく満ち足りているから)

                           ── 藤原道長