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雲の通い路
「あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ
をとめのすがた しばしとどめむ」
── 『古今和歌集』 872
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小傘 「うらめしやー!」
紫 「おつとめご苦労様です」
小傘 「えー、どうして驚かないの?」
紫 「もうすぐ紅白のお目出度い奴が来るから、そいつにすれば良いわ。
多分目の玉飛び出して驚くと思うから」
小傘 「本当?」
紫 「嘘。それより貴方、黒船を見ていないかしら」
小傘 「黒船?」
紫 「悪知恵乗せた異国の船よ。貴方はどっち?」
小傘 「何の話なの?」
紫 「戒告よ。貴方も妖怪なら全うなさい」
小傘 「つまりー、人間を驚かせという事ね!」
紫 「それも古典的な方法でね。
そういうのって何て言うのかしら?」
小傘 「さあ、さでずむ?」
紫 「貴方がここに居ることで、巫女も無事に辿り着くでしょう」
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天つ風 雲の通い路 吹きとぢよ 乙女の姿 しばしとどめむ
(天空を吹く風よ、雲を寄せて道を塞いでおくれ。
天女の美しい姿を、もうしばらく引き留めていたいから)
── 遍照
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