Radical   Discovery 



  
昔におよべ


  「たねとなる ひとのこころの いつもあらば
          むかしにおよべ やまとことのは」

                    ── 『金玉歌合』



 幽々子 「紫、月が綺麗よ」
  「珍しく、見えてるときに言うのねぇ」
 幽々子 「見えなかったら、綺麗かどうか判らないじゃない」
  「感じることはできるわ」
 幽々子 「儀式的なお月見はもうおしまい。
       ただ在るものに対して素直になるのって素晴らしいわ。
       もし月が見えなかったら、大声で泣けばいい」
  「今日はやっぱり珍しいわねぇ。
    見えない月を飾り立てるのも、幽雅なものよ」
 幽々子 「悲しいわ。型に囚われた言葉って」
  「何か思うところがあったのかしら」
 幽々子 「なんとなく」
  「そういう時代もあったのよ。
    でも、もう昔の話。言葉は、自由よ」
 幽々子 「何か思い当たることでもあるの?」
  「月が綺麗なことかな」



種となる 人の心の いつもあらば 昔におよべ やまとことのは
  (歌の種となる、人の心が常にあるならば、
        古に追いつけ、追い越せ、和歌の道よ)

                             ── 京極為兼