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わが宿は言はでこそ
「わがやどは そこともなにか おしふべき
いはでこそみめ たずねけりやと」
── 『本院侍従集』
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華扇 「俗世を離れて久しいので、なんのおもてなしもできませんが……」
紫 「お気になさらず。私にも裏などありませんわ」
華扇 「そうですか……」
(魔理沙が話したとは思えないし、ここも監視下か……)
紫 「この前のお礼がしたくて、来たのですよ」
華扇 「……この前の?」
紫 「里の問題を解決したのでしょう?」
華扇 「ああ、あれは……私は……」
紫 「霊夢が解決したのね。
異変の解決は、博麗の巫女の仕事ですもの」
華扇 「……でも貴方は、礼に来たと」
紫 「ここに来るのは骨が折れましたけどね」
華扇 「……私の家は、何重にも方術をかけております。
でも貴方にとっては、遊びのようなものでは?」
紫 「骨を折るのは私の仕事です。
貴方は『こっち側』なんですから。
たとえ雲の上でも月の裏側でも、見つけますわ」
華扇 「それは、心強いことですね」
紫 「それはそれは、安心でしょう」
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わが宿は そこともなにか 教ふべき いはでこそみめ 尋ねけりやと
(私の家がどこか、どうして教えましょう。
言わなくても訪ねてくるかどうか、試してみましょう)
── 本院侍従
わが思ひ 空の煙と なりぬれば 雲ゐながらも なほ尋ねてむ
(私のおもひは煙となって立ち昇り、
雲の上までもなお訪ねていきましょう)
── 藤原兼通
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