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我と等しき人しなければ
「おもふこと いはでぞただに やみぬべき
われとひとしき ひとしなければ」
── 『新勅撰和歌集』 1124
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紫 「ああ、悲しいわ」
幽々子 「非は誰にあったのかしら?」
紫 「誰にも非は無いわ。でも、心がある」
幽々子 「死んでいる私にも?」
紫 「生きている私にも。
心があるから、悲しくなる。
どれだけ言葉を重ねても、届くころには心が消える。
あったはずの心が消えるから、悲しくなるのよ」
幽々子 「花はどうかしら?」
紫 「花は悲しくて散るのでしょう」
幽々子 「あら、違うわ。花が一番悲しいのは咲いたとき。
咲いた瞬間から、散る苦しみが始まるの」
紫 「心の芽生えは、開花の時では無いはずよ。
花を咲かせようと愛する心が、花には伝わるはず」
幽々子 「その心を受け取って、花は咲くのよ」
紫 「……そうね」
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思ふこと 言はでぞただに やみぬべき 我と等しき 人しなければ
(思ったことは言わないで、ただ口を閉ざすべきだ。
自分と同じ心の人など、いないのだから)
── 在原業平
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