Radical   Discovery 



  
八雲立つ


  「やくもたつ いづもやへがき つまごみに
          やへがきつくる そのやへがきを」

                       ── 『古事記』 神代



  「八雲立つ〜♪」
 早苗 「わわっ、何ですかいきなり」
  「ここがあの女のハウスね」
 早苗 「あれ、もしかして貴方って、その、妖怪なんですか?
     ……私を誰だか知って話しかけているのかしら?」
  「質問は一つずつにしてほしいけど、どっちも頷いてあげる。
    大蛇に食べられそうな子が居るって聞いたから、飛んできちゃった」
 早苗 「何のこと? 私は風祝の早苗。
     今に、この幻想郷に奇跡を起こす現人神です。
     ちょっと忙しいから、話は後にしてもらえますか?」
  「お酒は九夜十日置いた八塩折で良いかしら」
 早苗 「……さっきから、何を言ってるの?」
  「うーん、蛇は大したことないわね。
    それよりも、その櫛ね。ここに立派な社殿を造って封じましょう」
 早苗 「ちょっと、いい加減に──」
  「私は八雲の紫。挨拶ついでに教えてあげる。
    奇稲田姫から奇跡を取ったら、ただの稲田姫よ。
    ここでは奇跡など有り触れた力だということを、忘れないで」
 早苗 「……貴方、あの博麗神社とかいう所の回し者ね?
     麓の神社は、妖怪までも手駒にして抗戦に出ようと言うんですか?
     私だって、それなりの覚悟があってここに来たんです。
     この幻想郷に、神社は一つで良い!」
  「だから質問は一つだってば。ちなみに、どっちもノーよ。
    さあ、その風でどんどん雲を湧き上がらせて頂戴。
    私は山の上から根の底から、障子の隙間からずっと見てるから」



夜久毛多都 伊豆毛夜幣賀岐 都麻碁微爾
        夜幣賀岐都久流 曾能夜幣賀岐袁

                             ── 建速須佐之男命