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青は藍より出でて藍より青し
── 『荀子』 勧学篇
「青は藍より出でて藍より青し。
弛まぬ努力が、藍を藍足らしめていると心得よ」
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天子 「そこな狐さん。困った顔してどうしたの?」
藍 「ん、ああ。少し考え事をしていてね」
天子 「そんなに尾を増やしても、答えは見つからないんじゃない?」
藍 「これは元からだ。でも、話のタネは増えるかもしれないね」
天子 「それは魚類ね」
藍 「人も魚も同じさ。有ること無いこと付け足して、
さも真実のように語りたがる。鯉だって龍になるだろう」
天子 「じゃあ貴方は、人を根っからの悪玉だと思っているの?」
藍 「化かされるということは、迷いがあるということさ。
だから私は、確実な結果だけを導き出す。
推論や閃きなんてものは、心の迷いを言い換えただけに過ぎない」
天子 「青は藍より出でて藍より青し。
藍草で染めた青は、もとの藍草よりも青くなる。
氷は水から出来るが、その氷は水よりも冷たい。
硬い鉄も、熱することで形を変えることが出来る。
人も同じよ。変わろうとする努力が人を変える。
火を通さない鉄が、その形を変えることは無い」
藍 「私は、そう言って惑い続けた人間を何人も知っている。
その心掛けさえも、一種の思考停止のように思えてしまうよ」
天子 「考えを唾棄することこそが思考停止よ。
弛まない努力だけが、天性の悪に打ち勝つ全て」
藍 「結局は推論さ。いつか統計を取ってみたいね。
そう信じて行動した何割の人間が、悪に染まらなかったかを」
天子 「誇張はしないようにね」
藍 「私は人でも魚でもないよ」
天子 「うん、人魚に足はあったかな……」
天子 「ところで、考え事って何だったの?」
藍 「いや、大したことじゃないよ。
最適な吸収率を実現する、油揚げの油温と時間を求めていたのさ」
天子 「小さいわね……そんな計算に甘んじてちゃ、
いつかお弟子さんに追い抜かれるわよ」
藍 「まだまだ。猫と狐じゃ、尾の数が違うよ」
天子 「まあ……猫は乱歩とかも得意ですし」
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君子曰く、学問は途中で止めてはならない。
青は藍草から取れるが、その青は藍よりも青い。
氷は水から作るが、その氷は水よりも冷たい。
曲がった木は定規をあてれば真っ直ぐになり、
金属も、砥石で磨くことで鋭くなる。
高い山に登らなければ、天の高さを知ることは出来ず、
深い渓谷を見なければ、地の厚さを知ることも出来ないように、
古代の言葉に耳を傾けなければ、学問の重大さを知ることが出来ない。
異民族の子供たちは、生まれたときこそ同じように産声を上げるが、
成長すれば、私たちとは異なった風俗を身に付ける。
これは教育が、そうさせているのである。
── 『荀子』 勧学篇
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