Radical   Discovery 



  
暴虎馮河

                     ── 『論語』 述而

  「死して悔いなき者は我与せず。
    その志は十分に伝わっているはず」




 天子 「あら、貴方はいつぞやの」
 布都 「近寄るでない。我はいま機嫌が悪い。
      ああ、何処かに手頃な寺はないものか」
 天子 「こらこら、一体何があったのかしら」
 布都 「しかし、同胞のおぬしなら判ってくれるやもしれぬ。
      我は太子様を守ろうとしてだな……」
 天子 「聞いてあげましょう。同胞じゃないけど」
 布都 「太子様は事あるごとに屠自古を褒めるのだ。
      やるときはやる、抜くときは抜く。
      そういう気遣いができるのは君だけだ、とな。
      そこで我は聞いた。太子様が頼りになさるのは
      どのような人物ですか、と」
 天子 「ああ、うん」
 布都 「太子様は仰ったのだ。
      命知らずで無鉄砲な奴はごめんだ。
      臆病で注意深い人間の方が頼りになるよ、と」
 天子 「貴方はそうじゃなかったのね」
 布都 「我はこれほどまでに太子様を慕うておるのに!
      太子様のためなら、死ぬことも厭わず!
      やはり仏法が悪いのだ!おのれ白蓮!」
 天子 「いやいや、仏法悪くないし、貴方はもう死んでるから。
      まあまあ、その太子様の戒めを素直に受け取りなさい。
      それは貴方の気持ちを察して言ってくれたのよ」
 布都 「な、なんだと」
 天子 「貴方の愛はしっかりと伝わっているわよ。
      太子様を守るのは自分だ、という気持ちを知っているからこそ
      無理をしないように、と言ったのでしょう」
 布都 「お、おお……そうだったのか。なんと失礼を。
      こうしてはおられまい。すぐに戻らねば」
 天子 「はい、頑張ってねー(三角関係って難しいのね)」



 孔子は顔淵に言った。
「重用されれば全力を尽くし、用いられなければ静観する。
このような境地にいるのは私とお前くらいだろう」
 すると、子路が尋ねた。
「もし先生が大軍を率いられたら、どんな人物を頼りになさいますか」
 孔子は答えた。
「虎と格闘したり黄河を泳いで渡るような人物は登用しない。
臆病なほどに慎重で、計画的な人物を任命するだろう」

                     ── 『論語』 述而