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道聴塗説
── 『論語』 陽貨
「道に聴きて塗に説くは、徳をこれ棄つるなり。
ま、私にも耳の痛い話よねー」
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響子 「おはよーございます!」
天子 「お、おはよう、ございます」
響子 「挨拶はきちんとしないとね」
天子 「まるで私が普段、挨拶しないみたいな言い方ね。しないけど」
響子 「挨拶は仏教に由来するのですよ。
明るい挨拶は迷いを晴らします。
誰にでも元気よく挨拶することは、
功徳を積みながら、回向することでもあるのです」
天子 「たしかに、貴方には迷いが無さそう」
響子 「何でも聞いてください。
人の悩みを聞くのも修行のうちですから」
天子 「……そこの命蓮寺の幡、動いているわね」
響子 「動いている? あ、そうですね。今日は風が強いですし」
天子 「風が動くんじゃなくて、幡が動いてるんじゃないの?」
響子 「幡が? どういうことですか?」
天子 「ふふふ、これが挨拶よ。
私は挨(近づく)、貴方は拶(迫る)。
お前がそこで譲っては、挨拶にならないよ」
響子 「あ……なんだか聞いたことがある」
天子 「道聴塗説。受け売りはいつか損をする。
たしかに自分のものにするまで、暖めておきなさい」
響子 「これは昨日、聖様から聞いたばかりで……。
挨拶は一方通行じゃない。両方してこそ意味があるんですね!
それで、動いているのは幡なんですか? 風なんですか?」
天子 「うーん……それはきっと、その聖が答えるはずよ」
響子 「えー、挨拶はきちんと!」
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子曰く、道に聴きて塗に説くは、徳をこれ棄つるなり。
先の道で聞いた言葉を自分の糧ともせずに、
後の道ですぐに他の人に説いて聞かせることは、
自分から徳を棄てるようなものだ。
── 『論語』 陽貨
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