Radical   Discovery 



  
郢書燕説

                      ── 『韓非子』 外儲説

  「郢書燕説。
    そのロゴスが創造の原動力なのね」




 天子 「新聞なんて熱心ねぇ」
 霖之助 「届くものに目を通すのは当たり前のことだが、
       それより、これを見てくれ。こんなものは今までなかった」
 天子 「ん?」
 霖之助 「見えないかい?
       枠外に小さく文字が書いてある」
 天子 「あ、ほんとだ……『みせないこと』?」
 霖之助 「印刷じゃない手書きのこの小さな文字、君はどう見る?」
 天子 「……これ、配っちゃいけないものだったんじゃない?」
 霖之助 「……はぁ! 天人でも見抜けないか。
       やはりこれは僕だけに判るように与えられたメッセージなんだ」
 天子 「はぁ?」
 霖之助 「いいかい。新聞とは過去を載せて未来を推し量る道具だ。
       そこに『みせない』、つまり『店が無くなる』と書かれる意味。
       これは僕の店がいま危機に瀕しているという警告なんだよ!」
 天子 「店はずっと前から危機だと思うけど」
 霖之助 「これが手書きということは、彼女なりの未確定な事実ということだ。
       まだ何とかする余地が残されているということだろう。
       購読者を裏切らない報道精神には感服するよ。
       きっとこの新聞のどこかに確定的な事実、
       店を危機から脱する術が書かれているはずだ」
 天子 「熱心ねぇ」



楚の郢の人が、燕の宰相に送る手紙を口述筆記させていたとき、
灯りが暗いので「あかりをあげよ」と言った。
これを手紙の言葉と勘違いした書記は、
そのまま「あかりをあげよ」と書き入れてしまった。

燕の宰相には、この一文の意味が分からなかったが、
あかりをあげよ→明るいものを挙げよ→賢人を登用せよ
とこじつけて解釈し、その通りに行ったところ、国がよく治まった。

                    ── 『韓非子』 外儲説