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白虹日を貫く
── 『史記』 鄒陽列伝
「日暈は太陽無くして有り得ない。
主を失った白虹は、何のもとに輝くの?」
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天子 「また何か用? 貴方にうろつかれると、困るのよねぇ」
小町 「なに、ちょっと暇つぶしさ。
ここは魂が少ないから、空気が澄んでるねぇ」
天子 「貴方の怠慢で、顕界の空気が淀んじゃうのよ」
小町 「なんなら、ここにちょうど良い魂が──ってね。
お迎えは専門がいるから、あたいは関係ないや。
あたいは、こう距離を弄って……」
天子 「あら、これは……」
小町 「面白いだろう?
距離を変えることで、光は歪み、屈折する。
自由に虹を作ることも出来るんだ」
天子 「白虹、日を貫く……。
貴方、やっぱり転職したいのね?」
小町 「良い暇つぶしじゃないか。
お前さんの寿命、そろそろ尽きる頃じゃないのかい?」
天子 「はあ……いつかの死神のようになりたいのね。
私という日は、お前のような虹に貫かれるほど衰えてはいない!」
小町 「いやいや頼もしいねぇ。
この白虹の大鎌の前に、その命、もはや幾許も無し!」
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荊軻(ケイカ)は、燕太子の密命を受けて、
秦王の政(後の始皇帝)の暗殺を計った。
ところがこれは失敗に終わり、荊軻は逆に殺されてしまう。
燕の太子は、この暗殺の失敗を事前に覚っていた。
何故なら空に、白虹が日を貫かんとする様子を見たが、
この白虹が、日を完全に貫き通していないことを知ったからである。
── 『史記集解』
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