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太だ盛んなれば守り難し

                  ── 『墨子』 親士

  「人は其の長ずる所に死せざるは寡し。
    抜きん出た者を使うのは当然でしょう」




 小町 「おや、川を遡ったら天上についてしまったよ」
 天子 「嘘ばっかり。ここは貴方の寝床じゃないのよ」
 小町 「いやあ、舟がすっかり傷んじまってね。
      今日はお前さんの天気予報でも楽しむかねぇ」
 天子 「このところ、毎日遊んでるけどね。
      私は構わないけど、貴方は大丈夫なの?」
 小町 「出る杭は打たれるってね。
      お前さんも出過ぎた事をしたから、打たれたんだろう?
      船頭は他にも居る。私の担当はしばらく天の川なのさ」
 天子 「貴方に聞いても無駄だったわね」
 小町太(はなは)だ盛んなれば守り難し、だっけ?
      優れた者は才に溺れて自ら滅んでしまう。
      私ぐらい余裕がないと、川の流れは速いからね」
 天子 「それは違うわ。
      太だ盛んなれば守り難し。これは出る杭は打たれる、じゃなくて、
      出ない杭は一生使われない、ということよ。
      早いこと足を洗って、流れに乗ることね」
 小町 「おっと、川流れになっちゃ大変だ。
      足よりも、染まった手を清めておこう」
 天子 「やっぱり何言っても駄目ねー」



錐が五本あれば、真っ先に折れるのは一番鋭利な錐である。
刀が五本あれば、真っ先に折れるのは一番切れ味の良い刀である。
うまい井戸の水が一番先に汲み尽くされ、
高い真っ直ぐな木が一番先に切り倒される。
才ある人は、その才によって死ぬことも少なくない。
太だ盛んなれば守り難し。

しかし、功績をあげない臣下はどんな賢君でも取り立てない。

                      ── 『墨子』 親士