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風馬牛

                 ── 『春秋左氏伝』 僖公四年

  「風する馬牛も相及ばざるなり。
    巫女と出会ったのが運の尽きってね」




 霊夢 「二度と私の前に現れないことね!
     その皮引ん剥いてやるから!」
 天子 「穏やかじゃないわね」
 霊夢 「何、あんたも引っ剥がされたいの?
     薄皮なら熱湯でもかければ良いのかな?」
 天子 「桃じゃないし、物騒なこと言わない。
     それにしても貴方がこんなところに居るなんて珍しいわね」
 霊夢 「あんたこそ何の用があって竹林に居るんだか。
     私は火事の報告を受けてすっ飛んで来たのよ。
     異変かと思って。そしたら煙が燻るだけで何も無いし。
     うろついてた蓬莱人は要領を得ないし……」
 天子 「それで、偶然居合わせた妖怪兎をぎったんぎたんにしたのね」
 霊夢 「何よ、文句ある?」
 天子 「おお、こわいこわい。まったくの風馬牛よね」
 霊夢 「フーバギュー? 何それおいしいの?」
 天子 「慕い合う馬や牛が会えないほど遠く隔たっていること。
     お互いに全く関係が無いのに、巻き添えになった兎が可哀相だわ」
 霊夢 「ああ、焼いたほうが良かったのか」
 天子 「それはバーベキュー」
 霊夢 「妖怪は妖怪というだけで退治する!
     他に何の理由も要らないって習わなかった?」



 斉の桓公は蔡から夫人を迎えたが、喧嘩をして蔡に帰してしまった。
だが、蔡が夫人を再縁させると未練が募り、軍を率いて蔡を攻撃した。
そして蔡を打ち破ると、ついでと言わんばかりに楚に討ちにかかった。
これに驚いた楚の成王は、使者を遣わして理由を問いただした。

「斉は北海にあり、楚は南海にある遠国同士。
これほど離れていれば、求め合う牛や馬でさえも会えますまい。
貴方がこんな地までおいでになるとは、思いもかけませんでした。
一体どういうわけなのですか」

                   ── 『春秋左氏伝』 僖公四年