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韋編三絶

                     ── 『史記』 孔子世家

  「読書百遍、意自ずから通ず。
    それでも孔子は怪力乱神を語らなかった」




 天子 「お邪魔しまーす」
 小鈴 「いらっしゃいませ!」
 天子 「うわぁ、何だか埃っぽい……古い本が多いのね。
     噂は霊夢から聞いてたけど、年季入ってるわねぇ」
 小鈴 「あ、霊夢さんのお知り合いなんですか?
     古いだけじゃありませんよ。稀覯本です。
     これなんかどうです? 『私家版百鬼夜行絵巻』!」
 天子 「……これ、やばいオーラがするんだけど」
 小鈴 「やばいんです。ぞくぞくしますよね。
     だから非売品にしました。貸出なら構いませんよ?」
 天子 「うーん……これは何?」
 小鈴 「おや、それに目が留まるなんてお目が高い。
     それは『白澤図集解』、あの白澤図の原文を含む注釈書です」
 天子韋編三絶、紐が切れるほどに読み返すなんて、
     これは相当に使い込んでいるわね……」
 小鈴 「ここには、あらゆる怪力乱神が残されていますから」
 天子 「なるほどねぇ……、やっぱり噂通りの人だわ。
     ずっと埃っぽいと思ってたけど──これは埃じゃないね。
     貴方、いつか妖怪に食べられるわよ」
 小鈴 「あの、貴方は一体……?」
 天子 「ううん、気に入ったわ。いや、気になった、かな?
     これからちょくちょく寄らせてもらって良いかしら」



孔子は『易経』を愛好して繰り返し読んだため、
その巻物の綴じひもが何度も切れたという。

                    ── 『史記』 孔子世家