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一心岩をも通す
── 『史記』 李将軍列伝
「石に立つ矢は信念の証。
迷い無き心が、心の闇を振り払う」
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天子 「む、この鳴き声は……」
ぬえ 「よく気づいたね。
でも、貴方に私の姿は見えない」
天子 「これが鵺の鳴き声ね。初めて聞いたけど」
ぬえ 「聴いたこともないのに、鵺の鳴き声だって判ったのね」
天子 「噂に聞いてたから……」
ぬえ 「そう、貴方に私を知ることはできない。
あらゆる噂が私を作り出す糧となる。
全ての正体不明が私になる」
天子 「見える見えないなんて、関係ないわ。
迷いの無い心で突き通せば、それは必ず突き刺さる。
貴方がどんな姿をしていようと、ね」
ぬえ 「その弓は……鳴弦……!」
天子 「目には目を、音には音を。
この音は正体不明の矢となって、お前を貫く」
ぬえ 「ふん、知識に溺れた人間よ。
正体不明の飛行物体(だんまく)に怯えて死ね!!」
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李広は狩りの最中、草むらにうずくまっているものを見つけた。
それを虎だと思って、狙いを定めて射かけると見事に命中した。
ところが、近付いてみると、それは虎ではなく岩だった。
不思議に思ってもう一度同じように射てみたが、突き刺さらない。
虎であると信じて放った矢は岩にも突き刺さったが、
岩であると思って放った矢は刺さらなかった。
── 『史記』 李将軍列伝
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