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窮すれば通ず
── 『易経』 繋辞下伝
「極まれば変じ、通じ、また極まる。
明日のお前は、今日のお前ではない」
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天子 「……ほぉー」
ぬえ 「あ……な、何の用?」
天子 「いやぁ、貴方も念仏するんだなぁって、感心してただけ」
ぬえ 「これは……方便よ。
いまや正体不明でなくなった私は、ここでお世話になるしかない。
これもまた仮の姿なんて、面白い話だと思わない?」
天子 「誰にも言わないから安心しなさいって。
ずっと一人で念仏してるんでしょ?
貴方がここで少し孤立していること、天から見てたよ」
ぬえ 「余計なお世話だ」
天子 「天だけじゃなくて、仏も知ってるわ。
あの白蓮って人、ただの筋肉馬鹿じゃないみたい」
ぬえ 「白蓮が……?」
天子 「窮すれば通ず。易経の言葉よ。
易は万物の真理を明かし、その行く末をも知らせるもの。
もちろん、正体不明の貴方でさえも易は見抜いている。
易に絶対、永遠は無いわ。極まれば、必ず変わる。
窮地にあっても、必ず事態は好転するということよ」
ぬえ 「お前も白蓮のようなことを言うんだな……
私を救ってくれた、月の光のようなあのお方の……」
天子 「あれ、これって仏教の言葉だっけ?
ま、私はただの受け売りだから、白蓮ってやっぱり凄いのね。
その調子なら大丈夫。きっと今夜は良い月が昇るわよー」
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易は窮すれば変ず。変ずれば通ず。通ずれば久し。
あらゆるものは極みに達すれば変化する。
どうしようもない窮境には必ず道が開け、
一度道が開けると、長く安泰が続くだろう。
── 『易経』 繋辞下伝
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