Radical   Discovery 



  
枕を高くする

                     ── 『史記』 呂后本紀

  「枕を高くして千里の王たらん。
    忠言と佞言は注意して聞き分けないとね」




 天子 「ん……?」
 小鈴 「いらっしゃいませ!」
 天子 「今出ていった人、どこかで見たような……」
 小鈴 「私も名前は知らないんですけど、カッコいいですよね〜。
     妖魔本に詳しくて、色々な外来本を持ってきてくれるんです。
     私もあんな人になりたいなぁって……」
 天子 「常連さんなのね」
 小鈴 「はい、今度妖怪の字も教えてくれるって」
 天子 「物知りなのねー、その人。
     貴方、前にも言ったけど本当に気をつけなさいよ。
     人間も妖怪も、貴方に引き寄せられている気がするわ」
 小鈴 「うーん……私はただ妖魔本の研究がしたくて……」
 天子 「毎日安心して眠れるのが一番なのよ。
     まあ、人気者なのは羨ましいけどね」
 小鈴 「私、人気者なんでしょうか?」
 天子 「でも人気者は大変よ。貴方もすぐに判るわ」
 小鈴 「まるで人気者みたいな言い方ですね!」
 天子 「この純真すぎるタイプ……ちょっと判らせたくなってきた」



戦国時代、強大な秦を前に、燕・趙・斉・魏・韓・楚の六国は、
蘇秦の発案によって合従同盟を組んで対抗していた。
一方、張儀は連衡を発案し、蘇秦の死後に魏王に取り入った。
「大王が秦に仕えれば、隣国の楚・韓は手出しができなくなります。
そうなれば、大王は枕を高くして寝ることができるでしょう」
六国による強固な縦(合従)の同盟は、張儀の舌によって崩された。

                    ── 『史記』 張儀列伝

漢の高祖亡きあと、その妻呂后は権勢を振るった。
しかし、呂后の死後は、呂氏を滅ぼそうと様々な策が練られた。
趙王の呂禄は、仲の良い友人からこのように言われた。
「貴方は趙王の身でありながら領国に赴任せず、将軍も兼務している。
太后が亡くなり帝も幼いいま、権力を一手に握っていると危ない。
すぐに将軍の職を辞して、領国に赴任した方がいい。
そうすれば、貴方も枕を高くして趙の王でいられる」
この言葉を信用した呂禄は、将軍を辞職して領国に赴任した。
しかし、これは呂禄の友人を抱き込んだ周勃の策略であり、
空席となった軍事権を得た周勃によって、呂禄は滅ぼされてしまった。

                    ── 『史記』 呂后本紀