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矛盾
── 『韓非子』 難
「その矛で盾を突いたらどうなるのか。
錆びた矛は盾を蝕み、新たな盾を作り出す」
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天子 「へえー、何だかとっても複雑なのね」
諏訪子 「まあ、神様の世界にも色々あるってことさね。
つまり、私の国の力は、神奈子の国の力と交わることによって
さらに大きくなったわけよ。ま、昔の話だけどー」
天子 「それで、農耕の力を持つ神奈子さんに国を明け渡した」
諏訪子 「信仰に関しては、神奈子の方が熱心だからね。
私はそういうの面倒だからさ。おかげで楽させてもらってるし」
天子 「諏訪大戦の話は、私も古い本で読んだことがあるの。
でも、貴方の話はどこか矛盾していて、判らない部分があるわ」
諏訪子 「うん?」
天子 「諏訪を治める二柱の神、八坂と洩矢。
貴方の話では、八坂も洩矢も同列の強大な神様として扱っていて、
洩矢が治める地で、八坂がよく働いて信仰を深めたから、
洩矢は八坂に権力を譲ることにしたのでしょう?」
諏訪子 「まあ、そういうもんかな」
天子 「でも、元々洩矢がその地をよく治めていたのなら、
そこに八坂が入り込む余地なんて無いはずよ。
両神を同列の最高位にするのは、矛盾している」
諏訪子 「あーうー。そりゃ私は神奈子との戦いに負けたからねー。
蛙は口ゆえ蛇に呑まるる。私に非があったのだろうさ」
天子 「それでも諏訪の信仰の本質は、何故か貴方にある……。
本当に最強の矛を持っていたのは、どちらだったの?」
諏訪子 「──ふうん。
箱入りかと思ったら、なかなか出来るじゃない」
天子 「……ちょっと、怖いんだけど」
諏訪子 「ふふ、残念だけど神様には秘密事も多いんだ。
祟られたくなかったら、御神籤でも引いて帰るんだね。
いや……、その前に、私と弾幕祭りかな!」
天子 「神遊びね、良いわよ。
その鉄輪が矛か盾か、見極めてやる!」
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楚の国に、矛と盾を売る商人がいた。
彼はまず盾を取り出し、「この盾はどんなもので突いても貫けない」と褒め、
次に矛を取り出して「この矛はどんなものをも貫き通す」と言った。
そこで、一人の男が商人に聞いた。
「では、その矛で盾を突いたらどうなるのか」
商人は、返答に窮してしまった。
── 『韓非子』 難
儒家は堯と舜を聖人だと考えており、
舜が悪きを改め、人々を助けたから堯は舜に禅譲したとする。
しかし、堯が名君ならば、天下は完全に治まっているはずであり、
舜が悪きを改め、人々を助けるということは起こりえない。
一方が立派な人物だとすれば、もう一方はそうではなくなってしまう。
堯と舜をともに聖人と称えることは、矛盾の説である。
── 『韓非子』 難
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