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良弓は張り難し
── 『墨子』 親士
「良弓は張り難し、良馬は乗り難し。
能力は、縁故と感情に左右されてはならない」
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文 「まったく、何が千里眼よ。聞いて呆れる節穴ね」
天子 「穏やかじゃないわねぇ」
文 「あやや、これはこれは天人様」
天子 「改まらなくても良いわよ……どうしたの?」
文 「いえいえ、大したことではございません。
ちょっとばかり、部下と言い合ってしまったもんで」
天子 「ああ、さっき、すれ違った白狼天狗。
貴方たち二人は、どうも噛み合わないようね」
文 「噛み合わないどころか、向こうから噛み付いてくるのです。
白狼天狗ときたら、自尊心だけは一人前ですからね」
天子 「鼻の高さで言えば、貴方たち天狗はみんな同じよ。
貴方は上司として、公正な評価を出来ているのかしら?」
文 「ええ、そのつもりなんですがねぇ……」
天子 「良弓は張り難し、良馬は乗り難し。
人材もこれに同じ。優れた人材は扱いづらいでしょうが、
そのような人物であってこそ、組織の片腕を担うのよ」
文 「善処しますが、私は黒で、あいつは白なんです」
天子 「犬と猿……いや、水と油かな」
文 「いえいえ、白狼天狗は水入らずですよ」
天子 「なるほど、ストライキなのね」
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良弓は、ひきしぼることが難しい。
しかし、良弓であってこそ矢は高く飛び、深く突き刺さる。
良馬は、乗りこなすことが難しい。
しかし、良馬であってこそ速く、遠くに駆けることが出来る。
それと同じように、優れた人材は、使いこなすことが難しい。
しかし、それであってこそ、君主を良く補佐し、国を導くのだ。
── 『墨子』 親士
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