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掌を指す

                       ── 『論語』 八イツ

  「それが掌を指すように明確なものだったら、
    これほどの魔力は宿らなかったかもしれないよ」




 天子 「どう? 今年も上手くいきそう?」
 霊夢 「あんたって本当に暇人なのね。
      正月ぐらい炬燵で丸くなってたら良いじゃない。
      悪いけど、これから大事な儀式があるから帰ってくれる?」
 天子 「ご挨拶ね。猫じゃあるまいし。
      二年参りを追い返す巫女なんて始めて見たわ」
 霊夢 「だって、あんたは賽銭落とさないし」
 天子 「葉っぱ入れられるよりマシでしょ。
      それよりどうなの? 今年も天香香背男命を封じられそう?」
 霊夢 「まあ例年通りなら問題無いと思うわよ。
      それにしても、毎年この神事をやっているけど、
      儀式の中には私にも判らない所作が沢山有るのよねぇ。
      祝詞の意味も良く判らないし……」
 天子 「知らずにやっていたのね」
 霊夢 「そういえば、あんたの家系って元は神社なんでしょ?
      何か知ってたりする? 作法とか神饌で、判ったりしない?」

 天子 「比那名居一族は、名居守に仕えているからね。
      もちろん神道祭祀、有職故実に通じているわよ。
      でも、儀式というものは長い歴史の中で形骸化されていくから、
      その意味までは自信を持って答える事は出来ないわねぇ」
 霊夢 「要するに、知らないってことね」
 天子 「う……、でもそれは既に失われたものなんだから、
      それを答えられるものなら、何でもこの上で操れるでしょうね」
 霊夢 「掌(てのひら)の上、ねぇ」
 天子掌(たなごころ)を指す、よ。
      私だって、その神事の本当の意味を知りたいわ」



ある人が、子に天帝の儀式の意義について尋ねたところ、
子は「私は知らないよ」と言いながら、掌を広げて見せた。
「もしそれを知っている人がいたとしたら、
それは天下がここにあるようなものだろうね」

                        ── 『論語』 八イツ