Radical   Discovery 



  
佯狂

                    ── 『史記』 宋微子世家

  「王の良心を掴むには、劇こそまさにうってつけ。
    それがお前の生き様ならば、貫いて見せなさい」




 天子 「図書館は地下にあるって聞いたけど……」
 フラン 「ざんねんでした。ちゃんと糸は持ってきた?」
 天子 「あら、見つかっちゃった。
     あまりに琴の音色が綺麗だったから……」
 フラン 「こんなことしか楽しみがなくって。
      糸が切れそうなの。ちゃんと糸は持ってきた?」
 天子 「あるけど、蜘蛛の糸なのよねぇ」
 フラン 「死ぬことも許されないのね。良いわ、劇をしましょう。
      私はカンダタ、アラクネ、どっちになれば良いと思う?」
 天子 「どっちかと言うと、機織女かな?」

 天子 「どう? 私が演じたテセウスは」
 フラン 「私が負けるなんて……」
 天子 「貴方、それ佯狂でしょう?
     狂ったふりをしたって、私には通じないよ」
 フラン 「ざんねん、私は羊の姿をした狼なのさ」
 天子 「その舌引っこ抜いてやりたいわね」
 フラン 「そんなことより、糸が無ければ教えるわ。
      迷宮の出口はあっち。煉獄の入口はこっち」



 殷には三人の仁者がいた。
暴君紂王のもとで、三人はそれぞれの生き方を貫いた。

 比干は紂王に命を懸けて諫言し、無惨に殺された。
 微子は比干の行動を見て、国を去ることを決めた。
 箕子は狂人を装い、ひっそりと身を隠して暮らした。
自らの悲しみを琴に託し、その曲は箕子操として世に伝わったという。

                     ── 『史記』 宋微子世家