|
助長
── 『孟子』 公孫丑
「過ぎたるはなお及ばざるが如し。
果報を願うなら、天の意思に従いなさい」
|
天子 「御神田も田植えの季節ねー」
早苗 「あ、天人さん。この間は、桃の差し入れをありがとうございます」
天子 「……って、何か様子がおかしくない?」
早苗 「実はですね、もっと早く苗を伸ばせないかと思って、
ある儀式を行ったのです。秘伝なので、詳しくは言えませんけど」
天子 「ひょっとして、苗を引っ張ったりした……?」
早苗 「えっ……何で知ってるの?」
天子 「あらら」
早苗 「苗を引っ張ることで根は伸び、より強固な苗が育ちます。
私はこうして、苗の成長を助けているのですよ」
天子 「そういうことを助長と言うのよ。
引っ張られた苗は痛み、逆に成長を妨げてしまう。
無理に成長させようとすれば、成長するどころか、
かえって悪影響をもたらすわ。
天の賜物は、急がずゆっくり待ちなさい」
早苗 「そんな……毎年やってたのに」
天子 「まさか、これが『御作田』の正体なの……?
でもまあ、絶妙な施しによって苗が実るのなら、
それはたしかに秘伝だし、奇跡だよね」
早苗 「奇跡は、常識に囚われてはいけないのです!」
|
|
宋の国のある百姓は、疲れた様子で家に帰ってきた。
息子が不思議に思って尋ねると、彼は言った。
「苗の生長を助けようとして、苗を引っ張っていたのさ」
驚いた息子は、急ぎ畑に駆けつけた。
畑の苗は、全て引き抜かれて、枯れていた。
── 『孟子』 公孫丑
|
|