Radical Discovery - 比那名居天子の故事名言 - 一聴せざれば愚知分かれず










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一聴せざれば愚知分かれず

                   ── 『韓非子』 内儲説

  「一聴せざれば愚知分かれず。
    協力とは、互いの不可を庇うこと」



 天子:なんだか、面白そうなことやってるじゃない。
 鈴仙:あ、天人様……そんな自分の家のようにうろついて。
    みんなに見つからないうちに出て行った方が、身の為ですよ。
 天子:貴方に見つかったら、もう出られないわね。
 鈴仙:判ってるじゃない。
    でも、今日は貴方に用があるかもしれない。
 天子:……この、烏合の衆を何とかしたいのね。
 鈴仙:烏合じゃなくて、卯合よ。目が赤いでしょ?
 天子:まあ、黒くはないわね。
 鈴仙:実は姫様の要望で、例月祭の合唱団を組んだんだけど、
    どれだけ歌の練習をしても、いまいちなのよねぇ。
    でも、何が悪いのかが良く判らないの。
    詩歌に明るい貴方なら、原因が何か判るかと思って。
 天子:まあ、暗くはないけど……そうねぇ。
    一つ言うなら、一聴せざれば愚知分かれず。
    一人一人に聴かなければ、有能か無能かの判断は出来ない。
    集団での行為は、たとえるなら神輿を担ぐようなもので、
    そこに必ず、「担ぐポーズをする者」が居るはずよ。
 鈴仙:つまり……?
 天子:集団の評価こそ、個々に取らなければならない。
    貴方たち兎の合唱団に必要なものは、個々の能力。
    試しに合唱では無く、一人一人順番に歌わせてみればどう?
    果たして何人が、逃げ出すのかしらねぇ
 鈴仙:たしかにそうね……ありがとう、一度やってみるわ。
 天子:頑張ってね。
 鈴仙:……さてさて、貴方への用事は、もう一つあるのよね。
 天子:おっと、目が真っ赤よ。
 鈴仙:烏は貴方。その目が黒いうちに、言い残すことはある?
 天子:聴いてあげましょう、貴方の歌を。今に愚知が判るはず。




斉には三百人からなる笛の合奏団があったが、
あるとき王が一人ずつ笛を吹くように命じたところ、
大半が国外に逃げたという。

                    ── 『韓非子』 内儲説