永夜抄 - 博麗霊夢+八雲紫 Stage... 1 2 3 4 5 6A 6B Ex
Stage 1 蛍火の行方
蛍の灯りはいつもより激しく見えたのは気の所為か。
今宵は永い夜になるだろう。
魔理沙:ああ、月が綺麗だな。
アリス:えっ、あんたにはそう見えるの?
魔理沙:ふん、綺麗じゃないか。
こういう月ってなんていったっけ? 待宵?
アリス:呑気で良いわね。月見が楽しめて、人手が足りてたら……あんたなんか絶対に連れ出さないわよ。
リグル:月の見える夜は楽しまないと駄目じゃない。ねぇ。お二方。
魔理沙:楽しんでるぜ。私はな。
アリス:あら、私も楽しんでるわよ。魔理沙、あなた以上はね。
リグル:さっきといってる事が違うじゃん。
アリス:違うの。私が楽しんでるのは月見じゃなくて、
魔理沙:蛍見、だろう?
アリス:惜しいわね。あなたにしては。
リグル:……来ないのなら私から行くよ!
アリス:蛍狩よ。
魔理沙:蛍狩って蛍を捕まえる事であって、やっつける事じゃないぜ。
アリス:私は捕まえる気だったのに、あんたが潰したんでしょ?
魔理沙:ったく、やれやれだぜ……。私は蛍を避けただけだ。勘違いするな。
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Stage 2 人間の消える道
人間の通り道も、真夜中に出歩くものは獣か妖怪位。
少なくとも人の姿が見える筈も無い。
ミスティア:ちょ、ちょっと待って〜!
魔理沙:あー?
ミスティア:こんな夜中に何処に行こうっての?
魔理沙:毎年恒例の妖怪退治強化月間だ。妖怪の居る所なら何処にでも出かけるぜ。
ミスティア:それは何?私に喧嘩を売ってるの?
アリス:魔理沙が妖怪退治なんて滑稽だわ。
魔理沙:おお? 私の妖怪退治の腕を知らないのか?
私が魔砲を放った後には、妖怪どころか人間も残らない。
ミスティア:そこの人間。私の事、知らないのかしら。
魔理沙:あー?
ミスティア:夜の道で私を恐れない人間はいないわ。
その気になれば、人間なんか全滅する位の多くの妖怪も呼べるわよ。
アリス:……ふん、この夜雀風情が何を言うの。
魔理沙:はっはっは〜。この私が誰だか知らないと見える。
アリス:人間でしょ?
ミスティア:人間。
アリス:人間三昧。
魔理沙:いやまぁ。
ミスティア:いい? お前達は今夜から……夜は目が見えなくなるよ。
魔理沙:あー良く見える。どんな暗闇もばっちりだぜ。
アリス:ああもう! こんな雑魚にかまってないで先急ぐわよ!
魔理沙:それはそうと何処向ってるんだよ。そっちに敵が居るわけ無いだろ……。
アリス:でも、あっちの方から妖気を感じるのよ。
魔理沙:そっちは人間しかいないぜ。私の様に善良のな。
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Stage 3 歴史喰いの懐郷
一車道の先には人間達が住む小さな里がある。
だが里があるはずの場所には、何も、無かった。
慧音:お前達か。こんな真夜中に里を襲おうとする奴は。
魔理沙:うにゃ。通りがかっただけだ。気にするな。
慧音:ふん、妖怪の言う事なんか信用できないな。今夜を無かった事にしてやる!
慧音:お前達何もんだ?
魔理沙:おっとそこは、やんごとなき事情を思い出した、だろ?
慧音:流石にこれ以上は下がれないな。
魔理沙:さぁ、人間を明け渡して貰おうか。
アリス:ちょっとちょっと魔理沙! 誰が、人間をとって喰おうって言ったのよ。
慧音:ふん。こんな里まで妖怪が来るようになるなんて。
やはり異常な月の所為か。今まで、滅多に来る事は無かったんだがな。
魔理沙:誰も人間をとって喰うなんて言ってないぜ。
アリス:とにかく。私は急いでるの!
あんたが誰だか知らないけど、人間なんかにかまっている暇は無いのよ。
魔理沙:酷いぜ。
慧音:大人しく通り過ぎてくれるなら、私も何もしまい。だが、お前達は少々騒々し過ぎる。
アリス:ほら騒々しいって、魔理沙。真夜中だというのに、あんたが思いっきり魔法を使うからよ。
魔理沙:何言ってるんだ? 魔法は真夜中に思いっきり使うもんだぜ?
太陽の下で人知れずこっそりと使うのは、日光写真ぐらいなもんだ。
慧音:なにやら不穏な空気が漂っていたので里を遮断したが……どうやら正解のようだな。
魔理沙:だからー。誰も人間を襲うなんていってない。
アリス:(……明け渡せとか言ってなかったっけ?)
魔理沙:むしろ目の前の人間に用事があるのだ!
慧音:何でもいいよ、この与太郎が。里の人間にも里の歴史にも弾幕一本触れさせる物か!
アリス:魔理沙! 分かっていないと思うけど、こいつは人間じゃないわ。半獣よ。
魔理沙:満月が無くて変身出来ない半獣なんて、ただの人間だな。
アリス:あんたもただの人間でしょ?
慧音:満月さえあればこんな奴には……。
アリス:そうそう。私たちは満月を取り戻そうとしているのよ。
魔理沙:そうだ。最初から言ってただろ?
慧音:あー? 何だよそれ。聞いてない。
アリス:あんたなら誰の仕業か知っていそうね。
魔理沙:さぁ、私が勝ったんだから、約束通り教えて貰おうか。約束は今作ったが。
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Stage 4 uncanny 伝説の夢の国
月明かりの竹の国は、夢の様に不気味に見えた。
今にも竹が、妖しく輝きだしそうである。
霊夢:ちょっと待て!
何だ、何時までも夜が明けないからおかしいと思ったら、魔理沙の仕業ね。
魔理沙:おい、誤解だ。悪いのはこいつ一人だぜ。
アリス:何よ。あんたも同罪でしょ?
霊夢:こんな事して……一体何を企んでるのよ。
魔理沙:あれだな、ほら。霊夢、なんと言うか……。
アリス:歯切れが悪いわね。いつもみたいに言えばいいじゃない。
邪魔だ、そこをどけ!ってね。
魔理沙:馬鹿! こいつを怒らせると不味いぜ。
霊夢:私を怒らせる事自体が不味い事でしょ?
今日はちょっと懲らしめてやらないといけないわね。
アリス:ふん。あんた、後ろ見てもなんとも思わないの?
もう、歪な月もこんなに判り易くなってるじゃない!
霊夢:ああ! この月も、あんたらの仕業ね。
魔理沙:ああ、もういいぜ。諦めたよ。
そうだ。この終らない夜も、欠けて歪な月も、消えた人間の里も、お地蔵さんに傘かぶせて廻ったのも、全てはアリスがやった。
さぁ、そこをどきな!
霊夢:まぁいいけどね。月の光を蓄えたこの竹林で、あんたらは、光る竹の一つになる。美しいわね。
アリス:その言葉、ちょっと屈折させてお返ししますわ。
霊夢:さぁ! 終らない夜は、ここでお終いよ!
魔理沙:あれ? 逃げるなんてあいつらしくないな。
アリス:追うわよ。魔理沙。
霊夢:さぁ、あんたらに、本当の結界を見せてあげるわ。
魔理沙:何で仕切りなおす必要があったんだよ。
霊夢:そっちが二人だから二回!
魔理沙:さぁ急ぐぜ。
アリス:目的地が見えてきたわ。
霊夢:仕様が無いわね。悪巧みも程ほどにするのよ。
アリス:なんか言った?
魔理沙:へぇ。竹林の中にこんな大きな屋敷があるなんて、初めて知ったぜ。
霊夢:あー? 私も初めて見たわ。
アリス:じゃぁね。良い子と負け犬はここでお帰りね。
魔理沙:霊夢、永遠の一回休みだ。じゃぁな。
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Stage 5 穢き世の美しき檻
「穢き所に、いかでか久しくおはせん。」
そういうと閉ざされた扉は一枚残らず開き──
鈴仙:遅かったわね。全ての扉は封印したわ。もう、姫は連れ出せないでしょう?
魔理沙:おう。長くて暗い廊下だったな、アリスよ。
アリス:取り敢えず、相手にしてやったら? 目の前の奴。
鈴仙:って、何? あんた達……、地上の人じゃないの。こんな夜中に何の用?
魔理沙:こんだけ長ければ、いくら掃除の達人でも一日が雑巾掛けだけで終るな。
アリス:魔理沙の家の掃除よりは、時間も手間も少なくて済むと思うけど。
って、いい加減相手にしてやったら?
鈴仙:もう、変なのが紛れ込んできたわね。うちは今忙しいの。こそ泥以外の用が無いならさっさと帰る。
魔理沙:真夜中に忙しい奴なんてのは、まっとうな生き方してない奴だけだ。なぁ同業者よ。
アリス:魔理沙が本題を言わないなら、私が言うわ。歪な月の異変は、あなたかその仲間の仕業でしょう?
鈴仙:そうよ。
魔理沙:さぁ、大人しく元に戻すか、一悶着あった後に元に戻すか、どっちかを選びな!
アリス:美味しい所だけ持っていかないの。
永琳:あの月は、まだ戻す訳にはいかないわ。
こうしている間にも、月の民との関係は悪くなりつつあるの。
もうこのまま、地上を大きな密室にするしか姫を逃す道は無い。
魔理沙:ああ? 何もんだ?
アリス:魔理沙、危ないわ。こいつの力は今まで感じた事が無い……。
永琳:あなた達は古代の力のコピーを使用しているみたいね。
まだ人間が居なかった時代の無秩序な力。あの頃が懐かしいわ。能力にも特許を認めるべきかしら。
まぁ取り敢えず、ウドンゲ、ここはお前に任せたわ。間違っても姫を連れ出されないようにね。
鈴仙:お任せください。閉ざされた扉は一つも空かせません。
魔理沙:なんだぁ? ベラベラ喋るだけ喋って逃げるなんてなぁ、後で倒しに来てくれ、って言ってる様なもんだぜ。
アリス:そう言ってたのよ。でも、後で倒しに行くかどうかは、異変の犯人かどうかで決まるの。
それを忘れちゃ朝になってしまうわ。
鈴仙:あんたら、私を無視しすぎ。
いい? この廊下、催眠廊下は私の罠の一つ。
真っ直ぐに飛べないお前達は、私の力で跡形も無く消え去るのよ。
アリス:それは魔理沙の台詞。光の魔砲で跡形も無く消え去るがいいわ、このぺんぺん草。
魔理沙:美味しい所持っていくなよ。
鈴仙:その台詞、月の兎である私の目を見ても、まだ吐けるのかしら?
さっきの撃ちに行く(FinalA)
魔理沙:月は元に戻ったのか?
アリス:いや、こいつじゃないわね。やっぱりさっきの……。
鈴仙:私に勝ったからって、師匠に敵うと思ってるの?
アリス:負けるはずが無いわ。
魔理沙:なんだか、貧弱そうだったしな。
鈴仙:今回は、力では私の負けを認めるけど……。
師匠は、月面一の頭脳の持ち主。あんたらみたいな馬鹿共なんか勝負になるはずがないわ。
魔理沙:あー? 弾幕に頭脳? 馬鹿じゃないのか? 弾幕はパワーだよ。
アリス:そういうこと言うから馬鹿扱いされるのよ。弾幕はブレイン。常識よ。
あたりかまわず撃ちに行く(FinalB)
魔理沙:月は元に戻ったのか?
アリス:いや、こいつじゃないわね。ほら、あそこ……。
魔理沙:判ってるぜ。あの扉だけ少し開いている。あんなに強い妖気は初めてだ。
鈴仙:ああ、そこは。
アリス:火薬庫かしら?
魔理沙:火薬庫だな。
アリス:それは行くしかないわね。異変の元凶の火薬庫なら。
魔理沙:そうだな。そこに行けば全てが解決する火薬庫だし。
鈴仙:ああ、師匠にしかられるぅ。
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Final A 姫を隠す夜空の珠
永い永い廊下。この廊下は何者かが見せる狂像か。
近すぎる月の記憶は、妖怪には懐かしく、薄い物だった。
永琳:ふふふ。無事ついて来てるようね。
アリス:魔理沙! こいつを撃つのよ。
魔理沙:んなもん、言われなくても判ってるぜ。
魔理沙:何度も出てきたり逃げたりしていたようだが、それは焦りか?
永琳:焦り? 貴方達は愚かねぇ。
ここまで誘導されてきた事にも気が付かないのかしら。
アリス:魔理沙、周りを見て!
魔理沙:見てるって。何時の間にか外だな。
永琳:そう、外よ。貴方達は永い廊下に導かれてここまで来た。
どう? 外の空気は。
魔理沙:というか、空気はあるんだな。地上の外も。
アリス:魔理沙! おかしいわよ。この月も星も……。
魔理沙:さっきから、魔理沙魔理沙うるさいなぁ。結局人が居なきゃ何も出来ないのかよ。
永琳:ふふふ。こうやって、月に向う人間を偽の月に繋ぐ。月と地上を結ぶ道は、私の手によって切られたわ。
これで、地上人は月に辿り着けない。そして月の民は、姫を探し出せない。
魔理沙:姫? そうか、お前達は月の民か。
アリス:なんでそう思うの?
魔理沙:狂ってる奴は大抵、月が原因だ。深い意味は無いぜ。
永琳:そう、姫も私も鈴仙も月の生まれよ。
でも、もう帰らない事にしたわ。ずっと昔にね。
魔理沙:別にあんたらが帰ろうがどうだろうが関係無いがな。
月の民は、月を見て楽しむ民の事を考えているのか?
永琳:そんなもの……。地上人も見てるだけなら問題なかったのに……。
わざわざ月にまで来ようとしたり、挙句の果てに、旗を立てて、自分の物だ、みたいにいう愚かな地上人が出てくる。
そんなだから何時まで経っても、地上人は下賎なのよ。
アリス:ふん。私達はそんな真似はしてないわ。地上に満月が無いと困る民も居る。
そんな地上であなたが満月を隠せば、それなりの報復を受ける事も考えているの?
永琳:ああ、いいのよ。術はもう済んだから。
朝になれば満月は返してあげる。といっても、元々私達のものだけどね。
魔理沙:そうかい。じゃぁ、残りは今まで隠していた分の報復だけ、という事だな。
アリス:そうね。どの位痛みつければ良いのかしらね。
永琳:あらあら、痛いのは嫌だわ。
あいにく、私は薬学の心得があるから、多少の怪我なら大丈夫だけど。
魔理沙:それは有難い事で。私達の滋養回復でもお願いするか。
永琳:それにね、薬は攻撃にも使えるのよ!
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Final A 五つの難題
解決不能な五つの難題。
しかし、長い年月と幻想の力は、それらの問題を解くのに十分だった。
永琳:ああもう。こっちに来させちゃ駄目だって言ってるのに。
魔理沙:なんだか知らんが。
アリス:良い方に向かっている感じね。
魔理沙:満月だな。
輝夜:そう、ただの満月よ。貴方達が何百年も何千年も見てきた本物の魔力。
アリス:魔理沙、あの満月は危ないわ。
魔理沙:満月が危ない? なに寝ぼけた事言ってるんだ?
アリス:あなたには見えないかも知れないけど……。
いま、大量に満月光線が降り注いでいるわ。
輝夜:変な名前をつけないの!
今は、月本来の力が甦っているの。穢れのない月は、穢れのない地上を妖しく照らす。
この光は貴き月の民ですら忘れた太古の記憶なのよ。
魔理沙:つまり満月光線だな。見えないがびしびしと感じるぜ。
アリス:これじゃぁ、普通の人間は5分と待たず発狂するわ。魔理沙は大丈夫かしら?
魔理沙:ああ、狂うのには慣れているぜ。
でも、これはどういうことなんだ? なんで今、満月なんだ。
輝夜:永琳の術で穢れのない月と穢れのない地上は隔離された。
私はここにいる事で、地上からも月からも身を隠す事が出来る様になったわ。
魔理沙:大げさなかくれんぼだな。
輝夜:でもね。永琳のこの術は完全だけど、あまり好きじゃないわ。
ここには誰も居ない。誰も訪れない。退屈過ぎて死にそうだわ。
アリス:穢れのない地上には誰もいない。月人らしいものの見方ね。
魔理沙:丁度良いじゃないか。穢い私達がたっぷり遊んで、それから連れ出してやるよ。
輝夜:まぁ、私はここの生まれじゃないから、私を連れ出すのは本当に大変な事よ。
……大昔にも同じ様なやり取りをした事があるわ。
魔理沙:まぁ、私は満月なんてどうでもいいんだがな。こいつが満月が無いと困るって駄々をこねるんでねぇ。
アリス:駄々をこねるどころじゃないわ。余りふざけたまねをしてると、天罰が下るわよ。
輝夜:天罰は怖いわね。でも、私が地上にいるのも天罰なの。
そうだ、こんな私を連れ出そうとする人には、いつも難題を与えてきたわ。
魔理沙:難題? それを解けばお前を連れ出せるというのか?
輝夜:今まで、何人もの人間が敗れ去っていった五つの難題。貴方達に幾つ解けるかしら?
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Extra 蓬莱人形
満月の下の、草木も眠る丑三つ時。
人間と妖怪の肝試しは、いったい何を恐れる?
最大の大罪の犠牲者は、いったいどこに居る?
慧音:待っていたぞ。満月の夜にやってくるとはいい度胸だ。
魔理沙:肝試しだからな。
慧音:あの人間には指一本触れさせない!
魔理沙:むしろ何も起きない事が不気味だ。不条理だな。
妹紅:本当の恐怖は、約束された恐怖の向こうにある。
居るはずのお化け役が消えたお化け屋敷程、怖い物は無いのよ。
鳴く夜雀も黙る丑三つ時の竹林。こんな時間にほっつき歩く人間が居るなんて。
魔理沙:何者だ?
アリス:魔理沙、こいつは……。
妹紅:私は昔からここに住む人間。別に取って喰ったりしないよ。
魔理沙:人間だと? そうは見えないがな。
アリス:魔理沙、この人は確かに人間みたいだけど。気をつけて。
妹紅:で、こんな時間にここに来た目的は何?
魔理沙:筍狩り。
アリス:肝試し。
妹紅:どっち?
魔理沙:判れよ……。
妹紅:満月の下、人間と妖怪の二人で肝試し。人間は勇気があるというか、馬鹿というか。
そこな人間の肝は、さぞ硬くて歯ごたえがあるんでしょうね。
魔理沙:あんた本当に人間か?
これほど肝好きの人間見たこと無いぜ。しかも生きているし。
アリス:魔理沙には生きている様に見える?
私には死んでいる様に見える。いや、生きていない様に見える、かな?
妹紅:もう、人を幽霊みたいに扱ってぇ。でも、殆ど正解だわ。なかなかの幻視力ね。
魔理沙:肝好きってところか?
妹紅:実はね。私には死が無いの。死なないって事は、生きてもいない。
死と生という余計な状態が無くなり、純粋な人間に近い人間。ある意味幽霊みたいなものかもね。
アリス:死なないですって! 煮ても焼いても。
魔理沙:蒸しても揚げてもなんて言ったか?
アリス:人間が不老不死になったって事は……。
例の伝説の薬が存在するって事よ。やっぱり嘘じゃなかったんだ。
魔理沙:何の話か判らんな。一体、誰に嘘の様な本当の話を吹き込まれたと言うんだ?
妹紅:例の薬? 蓬莱の事? そんなもの、とうの昔に全て使ってしまったよ。
確かに私はその薬を奪って、不老不死となり今に至る。
輝夜はいまだ私を亡き者にしようとするが、それも無理な話ね。もう千年以上も続く馬鹿な争いよ。
魔理沙:判ったぜ。全て判った。やっぱり、今回の肝試しのお化け役はお前だ。
輝夜に肝試しの話を持ちかけられた時からおかしいと思ったんだ。
輝夜を倒した私なら、お前を始末できると踏んだんだろうな。
アリス:ちょっと! 輝夜を倒したのは魔理沙一人の力じゃないでしょ?
それに、人間を倒すのは妖怪の仕事。目の前の貴方は、私に倒されるべきなの。
妹紅:なんと、輝夜を倒した? 目の前のこんな二人が?
なんと言うことかしら。あのにっくき月人がこんな人妖にやられるなんて。
これは久しぶりに歯応えのある刺客になりそうね。いや、歯応えがあるのは肝かしら?
アリス:残念だわ、蓬莱の薬。ぜひとも手に入れてみたかったわね。
魔理沙:私の肝は健康だ。硬くは無い。したがって私には薬は不要だよ。
妹紅:蓬莱の薬、人間は決して口にしてはならぬ禁忌の薬。
一度手をだしゃ、大人になれぬ。二度手をだしゃ、病苦も忘れる。
三度手をだしゃ……、お前達も永遠の苦輪に悩むがいい!
妹紅:あーれー。歯応え在りすぎるぅ。
魔理沙:まだやるか? 死なない、ってのは本当の様だな。
アリス:死ななくても、そろそろ動ける限界が来てるんじゃないかしら?
妹紅:もうとっくに限界よ。いい加減にしないと、明日筋肉痛で動けなくなっちゃうわ。
アリス:筋肉痛で済むの?
魔理沙:いつも思うんだが、不老不死の体を丁度半分に割ると、どっちが本体になるんだ?
アリス:いつも思わないでよそんなこと。
不老不死は、肉体を捨てる事。魂のみが本体となり、新しい肉体を生めるようになる事よ。
魂は大きさを持たないから、好きな所に新しい肉体を造る。逆に魂を失った肉体はすぐに滅ぶでしょう?
妹紅:やけに詳しいわね。蓬莱の薬を欲しがっていたみたいだし、不老不死にでもなろうとでも思ったの?
アリス:別に。魂に興味があっただけよ。人形を自立させられないかと思ってね。
それに妖怪には効かないんでしょう? その薬。
魔理沙:なぁ、気になるんだが。
魂が大きさを持たないなら、妖夢にくっついているアレはなんなんだ?
アリス:アレは幽霊でしょ? 別物よ。そんなところを気にしないの。
妹紅:私が不死なら幽霊は不生。肝と形が異なるだけで、似たようなものかもね。
魔理沙:そうだった。どうだ? 私の肝試しは。
妹紅:そうねぇ。硬くて黒くて……。肝硬変?
魔理沙:げげ、そんなにお酒飲んでたっけ?
アリス:魔理沙、肝臓が悪い時は肝臓を食べるのよ。それに不老不死の肝はね……。
魔理沙:不老不死とはいえ、人間の肝はちょっと。
妹紅:不老不死の体は、病には冒されないから、中まで奇麗よ。食べさせないけど。
魔理沙:食べないよぅ……。不老不死は魅力だがな。
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