雪の博麗神社。
間欠泉は止まる事は無かったが、幽霊や怨霊と言った地底の霊が湧いてくる事は無くなった。
地底の住人は思った以上に今を楽しみ、平和に満足していた様である。
地上の妖怪が危惧したような企みも野望もとうに失われ、地上を攻め入ろうとする者は愚かな動物に僅か見られただけだった。
これからは地底都市も恐れる事はない。霊夢達も比較的自由に行き来出来る様になった。その代わり、地底の妖怪もちょくちょく地上に顔を出す様になったのだが。
霊夢 「でさ、何か釈然としないんだけど」
魔理沙「鴉が熱すぎて間欠泉が止まらない。
猫が困って地上に怨霊でサインを送っていた、って事だろ?」
霊夢 「鴉が熱すぎる理由は神様を飲み込んだからでしょ?
色々と判ってきたんだけど……
でも、誰かが何らかの目的で鴉に力を与えたんじゃなくて?
力を与えた理由がさっぱり判らないの」
魔理沙「そこんとこ、どうなんだ?」
空 「うにゅ?」
神社の茶の間には何食わぬ顔で空とお燐がいた。彼女達はすっかり神社に馴染み、間欠泉で茹でたというゆで卵を頬張っていた。
魔理沙「温泉卵ならいくらでもあるから食べても構わんが、
そろそろ何が起こったのかをだなぁ」
空 「うーん。何度も言ってるけど、私が灼熱地獄跡で遊んでいたら
地上から神様が降りてきてね。
『この辺の地獄鴉で一番強い者を捜してるの』って言ってきた
んでそれなら私ですって即答したわ。
そしたら『なら、貴方に力を与えます』って貰っちゃった」
霊夢 「おかしな話ねぇ。
地上の神様がそんな事する意味が全く判らないんだけど。
旧地獄の底にいる鴉に力を与えて誰が何の得をするの?」
空 「私が得したわ。強い力を貰って」
お燐 「もぐもぐ。
灼熱地獄跡も昔はあそこまで熱くなかったのさぁ。
地底が地獄から切り離された時から、徐々に冷え込んでいってね。
特にさとり様が上に地霊殿で蓋してからは暗く寂しくなったもんさ。
でも、おくうがおかしくなってから急激に火力が増したのよ。
間欠泉の制御もままならない位にね。
もぐもぐ」
霊夢 「……灼熱地獄が再燃する事で誰かが得をするのかな?
もう一度、その力を与えた神様について思い出して欲しいの。
どんな風貌だったのか、何か目的を話していなかったかとか」
空 「うーん。
もうあんまり覚えてないねー」
お燐 「鳥頭よねぇ。
無駄よ無駄、さとり様の眼を持ってしても判らなかったよ。
もうすっかり心から抜け落ちてるってさぁ」
魔理沙「所詮、鳥の頭だな」
空 「確か山から来た神様だとは言っていたけど……二人組で」
霊夢 「二人組?
あんた、そんな重要なことを今初めて口にしたでしょ?」
お燐 「そんな事より温泉造ろうよ。
間欠泉の周りにさ、温泉入ってくいっと……溜らないねぇ」
魔理沙「お前は猫なのにお風呂が好きなのか?」
霊夢と魔理沙はうすうす感じていた。
その神様とはあの山の上にいる二人の神様なのではないかと。
鴉に聞いても拉致があかないので、こうなったら自ら確かめに出かけるしか無いと思った。冬の山は厳しいが、地底の灼熱に比べれば楽なもんである。
地獄の鴉に強大な力を与えた理由と、
これから何が起ころうとしているのかを。