――幻想郷が蘇生した。
冬の白色は春の日差しに彩られ、幻想郷は完全に生の色を取り戻していた。
冬の間眠っていた色の力が目覚め、幻想郷を覆う。
花と同時に妖精達も騒がしくなる。
その異常な美しさの自然は、幻想郷に住む者全てを驚かせた。
彼女たちはいち早くその異変に気が付いた。
桜、向日葵、野菊、桔梗……
まだ春だというのに、一年中全ての花が同時に咲き出していたのだ。
多くの人間と全ての妖精は、自然からのプレゼントと受け取って暫くその光景に浮かれていた。
だが、幻想郷でもっとも暢気な人間は珍しくあわてていた。
「こんなに判りやすい異変じゃあ、早く解決しないといけないわ。
じゃないと、私が怠けているってみんなに言っているようなもんじゃない!」
いつも通り、当てもなく勘で神社を飛び出したのだった。
幻想郷自体が蘇生した。
彼女たちも自然の一部。妖精の力は自然の力。
自然には抗えないことを、皆知っていた。